旅日記の今回は、四万十川のハイライト、
リバーカヤック体験記のつづきでございます。


Hカヤック入門 -2-
瀬を下る練習はスリルと爽快感があり、とても楽しい。
午前中の最後に、午後のツーリング(川くだり)について説明があった。
ツーリングの距離は8キロメートル、大きな瀬は2つほどだそうである。 初心者にはキツイのではないかと岩本さんに訊いたら、
「大丈夫、ほとんどの人が完走しています。」との答えであった。 全員ではなく、ほとんどというのが微妙ではある。

午後の部、ツーリングのスタート。
岩本さんを先頭に、僕、Sさんの順で漕ぎだした。
左に曲がりやすいのをカバーしながら、漕ぎ進んだ。
西土佐大橋の下を通過すると最初の瀬に突入する。
遠目には、練習で下った瀬より、いくらか厳しいかなあ・・・。くらいに見えたが、近づいてみると倍くらい激しい流れである。 白く、くだける波こそ少ないが、1メートルくらいのパワーに満ちた波が、「飲み込んでやるから、こっちにきてみろ!」と、ウネウネと上下しながら誘っている。
岩本さんが瀬の直前で待っていて、僕の顔にかいてある"ヤバイ"の文字を消しゴムで消すように
「大丈夫、大丈夫。瀬に負けないようにどんどん漕げば、どうということはありません。」と激励してくれる。

なんとかなるさ、と突っ込んだ。
入り組んだ複雑な流れ。
激しく揺れるカヤック。
なにくそ!とパドルに力をこめる。
カヤックで波を串刺しにするように進むと、デッキを越えた水が腹のあたりまでくる。
スプレーカバーがなかったら水船になるところだ。
バッチリ流心(流れの中央)を捉えて進む。
瀬は、右岸の大きな岩に向かって直進し、岩の直前で左に進路を変えて終了する。
岩にぶつかるまいと、最後の一漕ぎを殴り付けて瀬を抜けた。
血中のアドレナリンの量が急速に減少し、ドーパミンによる快感が脳全体に広がる。
パドルをあげ、デッキに置き、余韻を味わいながら、たっぷりの、ゆるい流れにカヤックをまかせる。
思い切りのけぞって空を見上げる。
初夏の雲が浮かんでいる。
流れにまかせていたのでカヤックが回って、後ろ向きに流れているが気にしない。
Sさんも無事のりきって、余裕たっぷりに、スローモーションで下ってくる。
津大橋という赤い鉄橋の下の河原にあがり、休憩をとった。 岩本さんが、あらかじめ橋の上から吊り下げておいた缶コーヒーをふるまってくれた。 
缶コーヒーは温かく、あんどんに灯がともるように、少し冷えた体をほんのりと暖めた。


いくつかの瀬とトロ場(ゆるい流れ)を漕いで、このコース最大の瀬にさしかかった。
手前で岩本さんが、カヤックが流されないように、ゆっくり後ろ向きに漕いで、僕たちの到着を待っている。
3艇が並んだところでコースの取り方を話はじめた。
「このまま進んで、流れが2つに分かれている、あの大きな岩の所ですが、流れの速い左に入って下さい。 右は緩やかですが、そのすぐ先にもう一つの岩があるでしょう。 よほど上手に漕がないとそれにぶつけてしまいます。」、
「左の流れを進むと、ここからは見えませんが、正面に頭をちょっと出した岩がありますから、右へ避けて下さい。」、
「舟は左に行きたがりますが、そのままのっていくと、流れが洗っている左の岸壁にぶつかるか、あるいは右に逃げようとして横向きになり、チンする初心者が多いところですから気をつけて下さい。」
「いいですか、最初左、次は右ですよ。」、「それでは僕が先に行きますから、十分、間隔をあけてついてきて下さい。」

岩本さんがスタートした。
左の流れを捉え、大きな岩の向こうに姿を消した。
次は、Sさんとのアイコンタクトの結果、自分が先に行くことになった。
最初の岩の所にきた。
右の緩い流れに比べ左は、落ち込みのような急な流れになっている。
右に行っても、次の岩にぶつかるようには見えないが、ここは敢えて左なのだ。
これまでにない激しさに揉まれ、バコン、バコンと舟がアップダウンする。
揺れが少しおさまったかなと思っていると、右の水面が持ち上がるような、左に傾いた流れが現れた。
そして次の瞬間、水中に潜む怪物のような岩が迫ってきた。
「漕いで!!漕いで!!」 という岩本さんの叫び声を聞いて、あわてて漕いだのが右側だった。
「しまった!逆を漕いでしまった!」と思う間もなく左に岸壁!
ぶつかってはならじと右に向けて力一杯漕いだが、ほとんど横向きになりながら、なお岩に向かっていく。
だがどうしたことか岩の直前でスーッと右に流れた。
ヤレウレシヤ、激突せずにすんだか。
と思う間もなく、そこへ右から大きな横波を受けた。
グラッと左に傾き、沈しかかった時、無意識にうまい具合に体をひねったようで見事に立ち直った。
コースどりを間違えて、キモを冷やしたが「俺もなかなか、やるではないか」と思った。
あとで、パドリングを誉めてもらおうと、
「さっきは危ないところだった」と、それとなく岩本さんに話したら、
「舟の性能が良くなかったら、見事に沈だったネ」とたしなめるような口調で批評された。 誉めてもらおうなんて、はずかしい初心者のわたしであった。

8キロのツーリングの終点は岩間の沈下橋である。
すでに回してあった車にカヤックを積み、帰途についた。
いましがた下ってきた四万十川を見ながら車に揺られていると、心地よい体の疲労感と、心の充実感が増幅されてくる。
岩本さんに言うべきお礼の言葉が尽きたので、こんどは、清流、四万十川を誉めた。
岩本さんはこの川とともに生きているのだから、四万十川を誉めることも、岩本さんに感謝するのと同じことのような気がしたからだ。

岩間の沈下橋付近

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