旅日記の今回と次回は、四万十川のハイライト、
リバーカヤック体験記でございます。


Gカヤック入門-1-
4月16日(火)
四万十に来たからにはカヌーを体験したいと思った。 川の流れを利用して遊びたいというのは本能のようなものである。
もっとも、下水道化した、そこいらの川を見てもそんな気を起こすことはあるまいが、四万十川を見せられた瞬間に俺の遊びの本能は呼び覚まされてしまったのだ。
カヌー館の受付で「初心者だがカヌーを体験したい」と申し出た。 シーズンオフに一人で講習を受けたいといっても無理かもしれないと案じていたが、ちょうどその時、もう一人カヌーをやりたいという男性(Sさん)が現れ、結局参加者2名の講習会が成立した。
階下の更衣室で、ウエットスーツなるものを、初めて着用した。 ジッパーがおなかのあたりでつらそうだったが事なきを得て、格好だけはいかにも出来そうな、パドラー(カヌーをあやつる人)が誕生した。
インストラクターは岩本さんといい高校時代には国体に出場した経験を持ち、95年春には腕を磨くためアメリカにカヌー留学もしているプロである。 笑顔にあどけなさすら感じる若者で、一見、きびしいホワイトウオター(白く波立っている激流)に挑んでいくファイターのようにはみえないが、自信からくる穏やかさのようなものがうかがえる。 案外こういう人が芯の強い、勇気のある男なのであろう。

先ずはパドル(櫂)の使い方、次に河原に置いたカヌー(正式には座席部分以外が覆われているのでカヤックという)に乗り込み、足の使い方などを習った。
次に教えてもらったのはスプレースカートの使用方法である。 スプレースカートとはカヤックに外から水が入らないようにコックピット(座席部分)の開口部をカバーするもので、スカートのようにはいて座席にすわり、スカートの裾に当たる部分のゴムをコックピットのふちに被せて舟を密閉するものである。 これで、たとえ沈(チンといい、舟が転覆すること)しても、カヤックに水が進入することはない。

しかし待ってくれよ。そうすると、体はスプレースカートで舟につながれており、これをはずさない限り舟から出られないではないか。
「そうです、イザ!というとき舟から脱出するには、落ち着いてスプレースカートをはずして下さい。」
「こんなに強いゴムで止められているものがうまくはずれますかネ?」
「ちょっとした力でとれてしまうようではカバーの役に立ちませんので普通は簡単にははずれませんが、この脱着用のひもを引っ張ると、ホラッ、簡単にはずれるでしょう。」
やってみると確かに、ひもを引っ張りさえすれば簡単にはずれる。
「脱出用のひもは必ず外に出しておくものですが、うっかりカバーの中に折り込んでしまって、引っ張ることが出来ず、大変なことになった人もいましたので、十分注意して下さい。」 と岩本さん。

沈して、舟から出ようとしたが体がぬけない。 ブク。
一瞬あわてたが、そうだ脱出用のひもだ! ブクブク。
アレッ!ひもがない!!ひもはどこだ!!! ブクブクブクブク。
早くひもを引かなくては!!
ブクブクブク。
なぜひもがないのだ!
ブクブク。
そうか、ひもを外にだしておくのを忘れたんだ! ブク。
もうだめだ。 ブ・・・・・。

なんてシャレにならない。

河原での講習を終え、ついに舟を水に浮かべるときが来た。
水深20センチくらいの流れのない水辺にカヤックを浮かべ、熱い風呂にでも入るように、ゆっくりと右足を入れ、コックピットの縁をつかんで、両手に体重をかけて乗り込もうとした。 だが舟がグラグラと左右にゆれて左足を持ち上げることすらできない。 やむをえず水に入って、カヌーをまたいだ状態から、まず尻を下ろし、次にソロソロと足を入れ、ようやく下半身がおさまった。
ひもに気をつけてスプレースカートの装着を完了した。
カヤックは相変わらず、ゆらゆらして、とても不安定だ。
なにかのキッカケで舟が大きく右に傾き横だおしになりかけたが パドルを杖にしてこらえ、なんとか立ち直った。
やれやれ、深場だったら立派な沈である。
それでもしばらくすると、体の堅さがとれたせいか、横揺れしなくなった。 小さな揺れに敏感に反応して、かえって揺れを大きくするようなことがなくなり、体で揺れを吸収できるようになったのだ。

先生についてこぎ出す。
びっくりするような勢いでカヌーが進む。
このあたりは流れが緩やかではあるが、それでも楽に川上に向かってこぎ上がれるのはスゴイ。
さて目下の所、最大の問題は、まっすぐ進まないことだ。
左右同じようにこいでいるつもりだが、どうしても左にまがってしまう。
不思議なことに、左に曲がり始めたとき、復元させようと左だけ一生懸命こぐのだがなかなか右を向かない。 仕方なしに、右側にパドルをつっこんでブレーキして方向を修正する。 おかげでブレーキのかけ方は上達したが、いまいましい。
Sさんを観察してみると、自分ほどではないが、やはり左に曲がるようだ。
「どうしても左に曲がってしまうのですが、左腕の力が弱いからですか?」と先生に訊くと
「というより、手首の返しが小さくて、左が十分水をつかんでいないからでしょう。」、「それから、舟から離れた水をかくほ、ど曲がりやすくなるからやってみて下さい。」、
「あと、なるべく遠い前方の目標を見ながら早めに修正することです。」と教えられた。

無我夢中で30分ほどやっているうちに大分感じが掴めてきた。 そして、ほんの一瞬だが、四万十川の水の色や周辺の木々の緑にも意識が向けられるようになってきた。
そのころ、少し出てきた余裕が、新たな問題点を発見した。 手のひらが痛くなってきたのだ。 パドルを常に力いっぱい握りしめていたせいで、手に豆ができそうになっている。 このままではパドルが握れなくなりはしないかと心配になり、冷やすことにした。
手を川の水に浸した。
水の清らかさ、冷たさ、そして指の間をすり抜ける感触が気持ちいい。
手の指が喜んで、ハヤのように泳いでいってしまっても、文句の言えない心地よさである。
よし、こうして時々冷やしながら、のんびりやろう。 それから、鉄棒にぶら下がっているわけではないのだから、握りも時々は弛めてやろう。

「これから瀬を下る練習をします。」そういって岩本さんが、川上に、こぎだした。
いよいよだなと思った。

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