ふうてんオヤジのさすらいはつづく。
それは、小さな事件を楽しむ旅なのだ。

C土佐の高知



4月14日、瀬戸大橋を渡り四国に入る。 高松自動車道、高知自動車道にて高知市に向かう。
昔、出張のついでだったか、桂浜に立ち寄ったことがあった。 月の名所と歌われるにふさわしい、風光明媚にして、観光地ながら俗化していない良い所だったという、印象が残っている。 今晩はひとつ静かな木造旅館にでも泊まり、一風呂浴びたら、浴衣のまま浜辺にでて寝転がり、ちくっと坂本龍馬のことを想ってみるのも悪くないなと考えながら車を走らせた。                

昼頃高知駅前に着いた。
擬宝珠をつけた、赤くて立派な欄干が、なんだか凝ったガードレールのようにしか見えない、はりまや橋を過ぎ、34号線を南下。 太平洋にぶつかり海岸線を戻るように桂浜をめざした。

『まったく! 桂浜になんかに来るのではなかった!』
浜辺に下る道は狭く、すれ違いが困難なため、上と下に無線をもった爺さんがいて交通整理をしているのだが、でかい観光バスの誘導に手を焼いて、ちっとも埒があかない。
どうにか下りてみれば、そこは広大な駐車場。
レストランか土産物屋のスピーカーが、桂浜のすばらしさを繰り返し、繰り返しガナリたてていて、なんともやかましい。

見渡したが落ち着きそうな旅館など一つもない。 
仕方なしに『冗談はやめてくれイ!』と言い放ち、再び爺さんの道を引き返した。
高知駅周辺まで戻ることにして、35号線を選んだのだが、このルートにある浦戸大橋では、橋の渡り賃をとられた。
 『なんでこんなものが有料なんじゃ!』と桂浜で悪くした気分をさらに悪くしたが、道路わきに『浦戸大橋の無料化を!!』という反対運動の立て看板を発見し、  『そうそう当然だよな』と、少し気分が柔らいだ。
気の利いた木造旅館がパーになったので、市内のビジネスホテルにでも泊まりたいと思ったがホテルの情報がない。 
本屋でホテル案内の本を立ち読みして得た情報によると、高知駅周辺で最も安い、駐車場完備の、ビジネスホテルは高知共済会館で、朝食付きがなんと五千円代である。 いくら日曜日だからとはいえこれは満室の可能性が大である。
第二候補はグリーン会館でこちらは六千円代で、これでも大変安い。 桂浜あたりの旅館を目指したときは、
 『きょうは少しは贅沢にいくからな!』、
 『仲居さんに心付けなんかはずんじゃうからな!』と顎を突き出し、鼻の穴をふくらめる勢いだったがいまや料金の安さがホテルの選定基準になってしまっている。 随分と方針が変更されたものである。

本屋にはすまなかったが 
『・・・電車道を高知駅に向かって戻り、はりまや橋で左折し、クロスする電車道を県庁前駅まで行って、次の通りの右手あたりに共済会館、反対側の少し手前にグリーン会館・・・。』
というぐあいに頭の中に地図をコピーして本屋を出た。           
共済会館は少し引っ込んだ所にあるため、気がつかずに一度通り過ぎてしまい、おかしいなと思ってUターンしたりしながらも無事に到着した。
いくら安いからとはいえ、外観から判断してヒドイと感じたら直ちに第二候補にしようと決めていた。
入り口右手の植え込みが伸びすぎていて暗い雰囲気になってはいるが、まずまずのホテルとみえた。
フロントでシングルの空きを尋ねると、曲がったことは絶対しないという面構えのおばさんが
 「あなたはどこの誰なのか?」とか
 「予約はしてないのか?」などと、むずかしい顔をして尋ねる。
 『これでは接客ではなく職務質問だな』と思ったが、めいっぱい愛想を良くしたおかげだろうか、宿泊の許可がでた。        駐車場は地階にあるので、ワンボックスカーが高さ制限に引っかからないかと心配だったが、それは大丈夫であった。  
ただ、場内が暗いうえ通路が狭く駐車幅もギリギリなので一汗かいてしまった。 
料金がこんなに安いのだから、壁紙がめくれかかっていても、絨毯のあちこちにシミがあっても、ユニットバスのお湯が出にくくても、驚くものではないと覚悟をしていたが驚いた。
いや、意外にきれいなのである。 シャワーを使い、ベッドに体を放り投げたのが6時すぎであった。                    少しく飲んで晩飯でもと、失礼のないよう気をつけながら、おばさんにキーを預け、外に出たら雨がパラついていた。
車から取ってきた傘をさして町に出た。


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